NAOZANE「あなたの身近な法律相談」アーカイブ

第 3回(「TOWN NEWS NAOZANE®」2020年11月号掲載)

テーマ:相続が発生した後の配偶者の居住権について

遺された配偶者がそれまでの住居に無償で住み続けるためには,
居住不動産の所有権を自ら相続するか,相続した親族から無償で借りる必要がありました。
所有権を自ら相続する場合には,相続できる預貯金額が少なくなり,
結果として不動産を手放さざるを得なくなるというケースがあったことから,
2020(令和2)年4月1日以降の相続で適用される配偶者居住権という制度が定められました。
配偶者居住権は所有権よりも廉価に評価されるので,預貯金の相続額が増えると考えられます。

配偶者居住権の評価額は,以下の計算式で算出されます。
建物評価額-{建物評価額×(耐用年数-経過年数-存続年数)/(耐用年数-経過年数)}
                                    ×複利現価率
経過年数はいわゆる築年数です。
存続年数は配偶者の平均余命(厚生労働省発表の簡易生命表)の年数です。
耐用年数は,木造建物の場合は33年で計算します。
複利現価率はこちら(国税庁ウェブサイト複利表)をご参照ください。
建物評価額2,000万円,築年数10年,平均余命12年の場合は,
2000万円-(2000万円×11年/23年)×0.701=13,294,783円になります。
配偶者が敷地を相続しない場合は、敷地利用権についても別途算出することになります。
この場合,配偶者が相続する財産の評価額は,配偶者居住権と敷地利用権の合計額です。
敷地利用権の評価額は,敷地評価額×(1-複利現価率)です。

居住不動産をそのまま相続するよりは安価に相続することができ,相次相続の対策にもなります。
他方で,配偶者居住権を取得する配偶者がまだ若い場合には
あまり恩恵がないかもしれませんのでご注意ください。

配偶者短期居住権は,判例で認められていた考え方が法律で明文化されたものです。
遺産分割協議が終了するまでの間は,配偶者が無償で居住し続けることができます。
遺産分割協議を行っていない場合であっても最低6か月(消滅請求時から6か月間)は
引き続き居住することができます。